2025.06.25

13拠点で行っていた手入力業務を1拠点に集約。営業担当者の業務負担を軽減し、年間2,380時間の業務削減を実現 

株式会社広島銀行
  • 業界金融・保険
  • URLhttps://www.hirogin.co.jp/
  • 帳票審査申込書
  • 効果注力業務に集中できるように, 人員コスト削減, 業務時間削減/残業減少, 自動化の実現
Before
  • 営業担当者がコア業務(お客様や不動産会社との関係構築、ローン相談・提案に注力する業務)ではなく、住宅ローン仮審査申込書のシステム入力業務に貴重な時間を費やしていた
  • Web申込の導入を進める一方で、商習慣として残る紙による申込が並存し、人によるデータ入力の自動化が求められていた
  • FAX書類の手作業入力は、正確性を担保するためのダブルチェックが必須となり、大きな工数を要していた
After
  • 13拠点を一極化することで、営業担当者はコア業務にさらに注力できるようになり、データ入力は専門チームが効率的に処理する体制を確立した
  • 1枚あたりのデータ入力完了までにかかっていた時間を25分から8分に削減した AI-OCRとRPAの連携により、紙申込も効率的に処理し、自走できるデジタル化を実現した
  • 実務担当者への説明やDX Suite の設定の改善を経て、実運用を起動に載せることに成功した

創業1878年、中国地方最大級のリーディングバンクである広島銀行は、​140年以上の地域密着で築いた顧客基盤と〈ひろぎんホールディングス〉の総合金融力を活かし、法人ソリューションから個人資産運用までワンストップで提供しています。今回は、その中でも​住宅ローンの仮審査業務において、「DX Suite」の導入を通じて単なるツール導入にとどまらず、新しい業務フローの定着により業務工数の削減を実現しました。この取り組みを主導したひろぎんホールディングスDX統括部の平野様、広島銀行営業企画部個人企画室の大井様、熊谷様に、背景と成果について詳しくお話を伺いました。

住宅ローン審査業務における課題とDX戦略

ーー業務内容について教えてください。

平野様:私はひろぎんホールディングスのDX統括部に所属しており、広島銀行では総合企画部との兼務という形で業務を行っています。部のミッションは、グループ全体のDXの推進と統括機能の発揮です。私の直接のミッションは、業務改革やビジネスプロセスリエンジニアリングの一環として、住宅ローンの仮審査業務にスコープを当てて業務改革を進めることでした。 

大井様:私は住宅ローン関連の商品企画や運営を担当している部署に所属し、実務を担っています。様々な課題を解決するため、DX統括部と連携し、業務をより効率化・改善する方法を協議しています。DX Suite のような新しいツールやサービスを現場部門に説明したり、ルールを作成したりしています。

<広島銀行 営業企画部 個人企画室 担当課長 大井 誠治 様>

<広島銀行 営業企画部 個人企画室 担当課長 大井 誠治 様> 

ーーDXに関する戦略を教えてください。 

平野様:当社では経営戦略として、三つの重要なトランスフォーメーション、いわゆる「三つのX」を掲げています。デジタル・トランスフォーメーション(DX)、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)、そして外部パートナーとのアライアンス・トランスフォーメーション(AX)です。これらが当社の戦略ドライバーとなっており、DXは非常に重要な位置づけです。 社内にはDX委員会という会議体を設置しており、各プロジェクトがDX案件として適切かどうかの評価や、進捗管理、効果検証などを行っています。我々DX統括部はグループ全体のDX戦略の推進と統括を担当しています。 

ゼロにはならない紙の自動化が課題に 

ーーその中でなぜ住宅ローン審査の業務を対象として取り組むことになったのでしょうか。 

大井様:住宅ローンは銀行業務の中でも紙の取り扱いが非常に多く、長い間ペーパーレス化が困難な業務でした。この課題を解決するために、紙での申込を完全になくすのではなく、紙という形を残したままデジタル化したいと考えました。しかし、AI-OCR という技術があるのは知っていたものの、FAXで送られてくる書類の読取精度やデータ化した後のシステムへの連携など、実際の業務フローに落とし込むことが難しかったのです。 

平野様:住宅ローンの仮審査をウェブからの申込で受け付ける窓口を設置し、その情報を自動でRPAにより審査システムに入力する仕組みを構築しました。しかし、商習慣として紙での申込も依然として多く、DX Suite 導入時点では、月に1,000件ほどの仮審査申込がある中で、ウェブ申込が全体の約3割にとどまり、残りの7割が紙での申込という状況でした。現在はその比率が逆転し、ウェブ申込が66%程度まで増加していますが、この紙申込の部分をいかに効率化するかが大きな課題でした。

<ひろぎんホールディングス DX統括部 平野 寿将 様>

13拠点から一極集中へ—営業人材をコア業務により集中できるように 

ーー導入によってどのような効果が得られましたか? 

大井様:最も大きな変化は、営業担当者のデータ入力工数の削減によって、コア業務により多くの時間を割けるようになったことです。従来は13の営業拠点それぞれの営業担当者が、送られてきた申込書をシステムに入力していました。 DX Suite 導入を機に、これらの業務を一カ所に集約しました。各拠点の営業担当者は申込書を受領しても、データ入力業務は行わず、申込内容を事前に確認するだけになりました。 

平野様:営業担当者はコア業務に注力すべきですが、申込書処理に時間を取られていました。 新しい体制ではデータ入力業務を集中させ、AI-OCR とRPAでさらに自動化することで、人員配置や業務内容を見直し改善することができるようになりました。 結果として、営業担当者はデータ入力の時間を顧客対応や提案業務にシフトできるようになり、さらに入力業務自体もより少ない人数で効率的に処理できる体制が確立できました。

25分→8分へ時間を削減。ダブルチェックをなくした新しいフロー 

ーー導入前はどのようなフローでしたか? 

大井様:従来の業務フローでは、不動産業者からFAXで送られてきた住宅ローン仮審査申込書を、各拠点の営業担当者が審査システムに手入力していました。さらに、データの正確性を確保するために、一次入力者の後に二次チェック者によるダブルチェックが必要で、これらの工程に1件あたり約25分もの時間を要していました。 特に月曜日には、週末に不動産業者を訪れたお客様からの申込が集中し、一日に100件近いFAXが届くこともありました。そのため、営業担当者はコア業務よりも、申込書の事務手続きに追われる状況でした。 

ーーDX Suite 導入後の具体的な業務フローを教えてください。 

平野様:まず、不動産業者からFAXが送られてくると、当行のシステムで自動的にPDF化され、所定のフォルダに格納されます。営業担当者はこのPDFを確認し、処理対象のフォルダに保存します。 次に、ローンセンターの担当者がこのPDFをDX Suite にアップロードします。AI-OCRによる読取処理が行われた後、担当者は読取結果を確認・修正します。 修正作業完了後、CSVファイルをダウンロードし、RPAが参照する所定のフォルダに保存します。RPAの起動ボタンを押すと、RPAがそのCSVを取得し、審査システムに自動入力します。 大きな変革点として、新しいフローではAI-OCRを一次チェックと位置づけ、人間が二次チェックを行う形に変更しました。これにより、従来2人の担当者が関わっていた工程を1人で完結できるようになり、1件あたりの処理時間が25分から8分へと大幅に短縮されました。 

ーー業務全体だとどれくらいの時間が削減できたのでしょうか。

 平野様:仮審査は月間約1,000件、年間約12,000件あります。導入前は紙申込が7割を占め、1件あたり25分かかっていましたので、年間約3,500時間の作業時間でした。DX Suite 導入後は、RPAでの連携も含め1件あたり8分程度となり、同規模の件数と仮定すると年間約1,120時間で対応可能になりました。差し引きで年間2,380時間の削減効果があります。

自分たちで運用・改善できる体制の実現を支える専任サポートが決め手

ーーDX Suite を選んだ理由を教えてください。 

平野様:ベンダー選定にあたり、金融機関での実績やFAXの読取精度も重視しましたが、特に決め手となったのは専任のサポート体制です。自走できる導入・運用を前提としていたため、専任の担当者がついて、私たちの課題に合わせたコミュニケーションを取りながら進められる点を評価しました。 トライアル(Success Program for DX Suite)では、既存の申込書で7割程度の読取精度があり、残り2割程度を人間が修正すれば十分業務に適用できると判断しました。また、出力データをCSV形式で取得できる点も、RPAや後続の審査システムとの連携が可能であるため、導入できると判断しました。 

ーーDX Suite のサポート体制はどのように役立ちましたか? 

平野様:特にトライアルの時の課題や背景を理解している担当者の方が、引き続き導入をサポートしてくれた点がよかったです。さらに、実務担当者から出た細かい要望を解決するための設定方法も詳しく教えていただけた点も助かりました。最初から自分たちで設定する時にはわからないところもありましたが、ある程度設定された状態のものを提示していただき、「こういう設定方法がある」と学べたことが有益でした。 導入から約3ヶ月が経つ2024年12月ごろには、「基本的に自分一人でDX Suite の設定ができる」レベルになっており、サポートを受けながらスキルも向上させ、社内で改善できるという好循環が生まれていました。

利用率90%達成の裏にあった地道な改善 

ーー導入当初は実務担当者からどのような反応がありましたか? 

平野様:2023年10月の導入直後は、現場からの反応はあまり良くありませんでした。「手入力の方が速い」という声もあり、利用率も低調でした。この状況を改善するため、12月に再度ローンセンターを訪問し、実務担当者と直接対話して具体的な課題を洗い出しました。 

熊谷様:現場からは具体的な要望が出ました。例えば、チェックボックス形式の項目で16項目すべてに0か1を入力する必要があることが非効率という指摘や、審査システムの入力制約(全角・半角の指定など)に合わずエラーが出てしまうケースがあり、それが負担になっているという声がありました。

<広島銀行 営業企画部 個人企画室 熊谷 智典 様>

平野様:これらの意見を踏まえてDX Suite の設定を見直しました。チェックボックス方式を該当番号だけを手入力する形に変え、RPA側で変換する方法に改善しました。また、審査システムが要求するフォーマット要件に対応するため、仮審査申込書のレイアウトも見直しました。 こうした改善により、2024年1月から利用率が向上し始め、2月には90%以上となりました。現在ではDX Suite とRPAを使った手続きが標準業務として定着しています。 

業務の見直しと新しいツールの導入、両方からのアプローチが重要 

ーー今後の展望について教えてください。 

平野様:住宅ローン本申込への適用拡大や、教育ローンなど他の無担保ローン商品への展開も検討しています。また、別プロジェクトでもDX Suite の活用を検討する動きが出ています。 当行では基本的にウェブによる申込を推進していますが、地方銀行として地域の不動産業者やお客様との関係を考慮すると、紙の申込も一定数残ることが想定されます。そのような状況でも、DX Suite とRPAを組み合わせたデジタル化により、効率的に業務を進めることができる体制を整えることが重要だと考えています。 さらに、当初は仮審査申込の処理改善を目的としていましたが、この成功体験が行内に広がり、他の紙書類を扱う業務でも同様のアプローチを検討する動きが出ています。ペーパーレス化を進めながらも、紙が残る領域でのデジタル活用を積極的に推進していきたいと考えています。 

ーー導入検討中の企業にアドバイスはありますか? 

平野様:AI-OCR導入の要点は「自社運用可能な体制構築」です。初期段階では専任サポートを活用しながら設定方法や活用方法を学び、段階的に自走できる体制を作っていくことが重要です。 また、システム導入だけでは課題は解決せず、業務プロセス自体の見直しも同時に行うことが必要です。今回のような審査入力業務の集約化といった組織変更も効果最大化のために必要でした。 熊谷様:やはり、実際の利用部署との密接なコミュニケーションが重要です。マニュアルを作成し、実務担当者のもとを訪れて説明を行ったり、操作を見たりしながら、現場に受け入れられる環境を整えるための地道な努力が大切だと思います。 

ーーありがとうございました。

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